物理実験で検証:拍手による音と流れ―Science Newsに論文が紹介されました(大学院理工学研究科 木山景仁准教授)
2025/3/12
Science Newsに大学院理工学研究科 木山景仁准教授が携わった研究を紹介する記事が掲載されました。この論文は、以下に示すように、私たちが日常的に行っている拍手動作によって生じる音や空気の流動に関する物理実験を報告したものです。紹介記事はこちらからご覧いただけます。なお、本論文はCornell Chronicleにも紹介されています。
論文の要旨
賞賛、お礼、承認、など、拍手という動作は私たちの日常において多様な意味を持っています。子供の頃を思い起こすと、手を叩く、という動作を伴う遊びを記憶されている方も多いでしょう。また、私たちは、拍手による音の大小や高低をどのように制御できるか、経験的に知っています。手を叩く際の形や速さを調整しながら、その場に合わせた拍手をされた経験を持つ方も、いらっしゃるかもしれません。これほど、ごく自然な動作として認識される拍手ですが、その音がどのような因子によって決定されるか、これまで十分な研究はなされていませんでした。例えば、Reppによる研究(The Journal of Acoustical Society of America, 1987年)では、拍手時の手の形状に合わせて、音の支配的な周波数を記述する理論的なモデルが提案されていましたが、私たちの知る限り、それを系統的な実験によって検証した例はありませんでした。
本論文では、手の構造を簡単化したシリコン模型を用いた模擬実験と実際の拍手動作を解析した実験、及び数値計算を組み合わせることで、私たちの手の構造が音響に及ぼす影響を調べています。加えて、拍手動作によって生じる気流の可視化や短い時間におけるシリコン模型の変形の効果についても議論しています。本論文における重要な観察は、両手を窪ませるようにして拍手をする場合において、前述のRepp(1987)が予想したように、主要な音の周波数は、よく知られるヘルムホルツ共鳴器の理論によってその概要を整理することができることです。両手が空洞を形作る時間は非常に短いにも関わらず、興味深い結果です。その他の音に影響を及ぼす因子についても、さらなる研究が必要なことは明らかですが、主要な形状因子の効果を実験的に検証した点において、この身近ながら複雑な現象の理解が一歩進んだと考えています。
なお、本研究は、コーネル大学、ミシシッピ大学との共同研究として行われました。

論文情報
論文名 | Revealing the sound, flow excitation, and collision dynamics of human handclaps |
---|---|
著者名 | Yicong Fu, Akihito Kiyama, Guoqin Liu, Likun Zhang, and Sunghwan Jung |
雑誌名 | Physical Review Research (American Physical Society発行) |
DOI | 10.1103/PhysRevResearch.7.013259 |
URL | https://doi.org/10.1103/PhysRevResearch.7.013259 |