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研究?産学官連携

高精度位置情報を活用し、不特定多数の人が集まる施設の課題を解決

~ICTを活用した高度移動システム~

Frontiers of SU Research

理工学研究科 間邊 哲也

無線通信技術として一般的なWi-FiやBluetoothを活用して、人や物の正確な位置情報を取得。その情報をうまく活用することで、施設内のさまざまな課題を解決する仕組みの構築に取り組むのが、本学 理工学研究科 間邊哲也助教だ。すでに中部国際空港などで評価試験なども行っており、社会実装までもう一歩のところまで来ているという研究の内容を紹介する。

位置情報の活用が業務効率化や利用客の利便性向上に貢献

 人やモノの移動環境を、ICTを活用して高度化させるITS(高度交通システム)に関する研究に取り組んでいる。
 一般的にITSというと、自動運転システムやETCなど、自動車に関する技術を想像する方が多いかもしれない。しかし、私がフォーカスしているのは、歩行者や自転車、キックボードなど、比較的移動速度が低速なものである。
 ITS実現のカギになるのが、いかに正確に位置情報を取得するかということだ。この情報をうまく使うかことでさまざまな課題を解決することが可能になる。
 例えば、空港で、搭乗時間になっても搭乗口に現れない乗客を航空会社のスタッフが探すシーンに直面することがある。あのようなことが起こるのは、乗客が空港内のどこにいるかわからないためだが、この時、乗客の位置情報が把握できれば、空港内を探し回る必要がなくなるのはいうまでもない。
 さらにそれぞれの位置情報をスマートフォンのアプリなどと連携できれば、搭乗口やチェックインカウンターなど、目的地までのルートを案内することも可能になる。
 つまり、人の位置情報を活用することで空港業務の効率性と利用客の利便性の両方を向上させられるのだ。

Wi-FiやBluetoothの電波を位置特定に活用

 現在、人の位置を特定する技術で、最も一般的なものはGPSだろう。しかし、GPSは屋外での位置特定はできるが、電波の届かない建物内や地下空間での利用は難しい。
 そこで屋内でも人やモノの位置を特定できる既存の技術を評価し、社会実装のために解決しなければならない課題の解決策を検討している。
 例えば、現在、注力しているのが、Wi-FiやBluetoothなどの無線通信を使った位置特定技術の研究。この技術は、無線の送信機と個人が所有するスマートフォン間の電波の強弱から位置を特定するものだが、この技術を安定的に利用するには、いくつか乗り越えなければならないハードルが存在する。
 最近のWi-Fi規格には、通信を安定させるため、人がいる場所に強く電波を発信する技術が用いられているが、これが位置特定にとっては都合が悪いのだ。そこで、このような技術が使われていても正確に位置が把握できるアルゴリズムの開発などにも取り組んでいる。
 なお、Bluetoothの場合は、このような技術は使われていないが、Wi-Fiに比べると通信範囲が狭い。そこで、エリアや用途によって、Wi-FiとBluetoothを使い分けることが重要だと考えているが、複数技術の組み合わせによる検討なども、フォーカスしている研究領域の1つである。

位置に関係することで人が困らない社会を構築

 これまで愛知県にある中部国際空港にて、空港内のナビゲーションシステムや、未搭乗者の預け入れ荷物を迅速に取り降ろすことで航空機出発遅延を抑制するシステムなど、さまざまな評価試験を行ってきた。
 2024年には、機械学習技術と、人々がより良い選択を自発的に選択できるようにするナッジという手法を用いて、国内線保安検査場の混雑のピークを分散させて、混雑回避を図る取り組みを実施。機械学習で予測した保安検査場の混雑状況を機械学習でリアルタイムに予測し、「いま並ぶよりも、少し待った方が早く検査が済む」旨をタイミングよくデジタルサイネージに表示することで、混雑のピークタイムをシフトさせることに成功している。
 駅、病院、ホテル、商業施設など、空港に関わらず、不特定多数の人が集まる場所であれば、位置情報をベースにしたサービスを利用する価値は大きいと考えられる。利便性向上や業務効率化だけでなく、災害時の避難状況などの把握にも役立てれば、安全性の向上なども期待できる。
 スマートフォンによって位置情報が簡単に取得できるようになり、さまざまなサービスに利用されているが、その利用価値は計り知れない。ポテンシャルを最大限発揮させるには、乗り越えるべき壁は多いが、多様な環境での実験や試験を行うことが重要だ。位置情報を活用して、何かしらの課題を解決したいと考える企業や団体は、ぜひ一度お問い合わせいただきたい。

本研究との産学官連携にご関心のある方は、こちらのフォームへお問合せください。
間邊哲也(マナベテツヤ)研究者総覧

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